子どもの貧困とその対応策

子どもの貧困

日本で「貧困」が語られるとき、「貧困」という言葉が指しているのは「相対的貧困」です。相対的貧困とは、等価可処分所得の中央値の半分の額を基準(貧困線)とし、それを下回る等価可処分所得しか得ていないことをいいます。

2018年の所得の分布状況では、約20%の世帯が相対的貧困です。また、平均所得金額は551万6千円であり、62.4%の世帯が平均所得金額以下です。各種世帯の生活意識調査によると、全世帯の57.7%、児童のいる世帯では62.1%が、「生活が大変苦しい」もしくは「やや苦しい」と答えています。

2018年の子どもの貧困率は13.5%であり、7人に1人が相対的貧困状態にあると言われています。ひとり親家庭の貧困率は50%前後の水準にあり、多くのシングルマザーが経済的に苦しい状況にあることがわかります。シングルマザーの81.8%が働いていますが、就労収入は平均200万円であり、ひとり親家庭の貧困率は先進国で一番高い水準にあります。

相対的貧困は、将来世代に連鎖することが問題です。親の収入が少ないことによって教育を十分に受けられないと、進学や就職で不利になりやすいと言われています。その結果、比較的低収入の職業につく可能性が高まり、低所得による貧困に陥ります。

 

貧困の事例

衣服の問題

経済的困窮により、季節に合わせた衣服を着たり、成長に合わせて服や靴を新調したりすることができないことがあります。また、洗濯をあまりできないこともあります。

服屋に行く服がない人のイラスト

食の問題

毎食きちんと食事をとれない場合があります。また、食事することができたとしても、お菓子のように安価なものしか食べることができず、栄養バランスが偏ったり、空腹を満たすのに十分な量を食べることができなかったりします。特に、給食のない長期休暇は、毎日食べ物を食べられるかどうかが分からないのです。

お腹が空いた子供のイラスト(女の子)

住の問題

世帯の人数に対する家の広さが十分でないことや、家が狭くて学習机を置くことができないことがあります。コロナによって、居場所がなくなった子どももいます。

将来選択の問題

進学を希望しているにもかかわらず、金銭的な問題によって高校や大学に進学できないことがあります。

所得と学力の関係・・・学習環境が整っているか、保護者が勉強することに対する肯定的な態度を持っているか等、家庭の文化的資本の違いによって、学力にも差が表れてしまいます。

勉強が分からない男の子のイラスト

オンライン環境へのアクセス・・・スマホは持っているけれど、ネット環境に接続できるPC(パソコン)は持っていなかったり、通信データ量が少なかったりという理由で、オンラインでの学習支援などが受けられないことがあります。

 

子どもの貧困と教育

教育が持つ意味

現代日本においては、将来への選択肢の幅が教育によってある程度決定されます。学歴は社会的に大きな意味を持ち、どのような職種に就くか、生涯でどのくらい収入を得られるか、という点に影響します。また、学習することによって見える世界が変わってくる、という個人の内面の変化もあります。知識や考える力を養うことで、今まで見えてこなかった自分の将来の在り方を模索できるようになります。

教育は、周囲からの評価・自己肯定感にも関わってきます。学校では頭の良さが数値化・重視され、成績は個人の努力によって向上するものとみなされがちです。しかし、子ども1人の努力には限界があったり、そもそも努力できる環境が整っていなかったりすることもあります。このような事実に直面した子どもたちは、「自分ができないからいけないんだ」「頑張ってもできないんだ」と、自分に対する自信を無くしてしまうかもしれません。

貧困によって起こること

それでは、貧困はどのように教育に影響するのでしょうか。

勉強する道具・空間がないといった物理的な問題はもちろん、勉強する時間の不足・勉強を教えてくれる人の不在も深刻な問題です。

ヤングケアラーという言葉を知っていますか?ヤングケアラーとは、家族の世話をする18歳未満の子どもや若者のことです。2017年時点で、通学や仕事をしながら家族を介護している15~19歳の子どもは、全国で3万7100人にのぼると推計されています。子どもがヤングケアラーとなるケースには、保護者と死別して障害のある兄弟姉妹の面倒を見ている場合や、保護者が仕事で忙しく、かつ経済的にヘルパーを雇うのが難しいため、その子の他に担い手がいない場合などがあります。平成30年度に三菱UFJリサーチ&コンサルティングが行なった調査によると、ヤングケアラーは「ひとり親と子ども」という家庭に最も多い(48.6%)とされています*。

また、勉強をサポートできる大人がいないことも大きな問題です。低学年時は特に、音読を聞いてもらう、家の手伝いをして親にコメントを書いてもらう、稲の苗を育ててくる、などのように、日本文化についての知識や家族の協力が前提となる宿題を出されることが少なくありません。普段の勉強においても、保護者が勉強を教えられず、塾に通うこともできないとなると、学校の勉強で取り残されてしまうかもしれません。

貧困の再生産

学歴と収入の間には明確な関係があります。厚生労働省「平成30年賃金構造基本統計調査」によると、学歴別賃金は、大学・大学院卒は男性で400.5千円・女性で290.1千円、高専・短大卒が男性で313.8千円・女性で258.2千円、高校卒が男性で291.6千円・女性で212.9千円となっています*。

以上から、「大学・大学院を卒業した方が賃金が高くなる傾向にある」ことがわかります。逆に言えば、「大学に行かなくても良いんじゃないか」「自分も定時制の学校に通っていたから、子供も定時制でも仕方がない」「私は受験については分からないから、何も口出しできない」といった家庭では、貧困が再生産される可能性があります。

子どもの貧困への対応策 〜教育〜

以下のような学習支援が展開されています。

生活困窮者自立支援法に基づく学習支援事業

生活困窮者自立支援法とは、生活保護に至る前の段階の自立支援策の強化を目的に制定された法律です。この法律に基づき、地方自治体の任意事業として、生活困窮世帯の子どもを対象とした「学習支援事業」が各地で展開されています(厚労省管轄)。

地域で行われている学習支援

文部科学省は、「学習が遅れがちな中学生・高校生等を対象に、退職教員や大学生等の地域住民等の協力により実施する原則無料の学習支援」として地域未来塾の普及・推進を行っています。2018年度時点で、全国の中学校・高等学校合わせて2995校において取り組みが行われています*。

子どもたちの豊かな学びや成長を支援するための地域と学校の連携については、「学校と地域で作る学びの未来」をご覧ください。

その他の学習支援

その他、国や自治体の事業とは別に、任意の人々が始めた学習支援もあります。経済的理由から学習環境が整っていない子どもを対象とした無料塾が各地で開催されています。無料塾は子ども食堂をはじめとする食の支援との併設で行われていることも少なくありません。

昨今のコロナ禍による影響を受けて、オンラインによる学習支援活動も行われています。オンライン学習サポートを行っている各種団体については下記をご覧ください(随時更新中)。
オンライン学習広場「かしの木」

 

子どもの貧困と食の支援

食が持つ意味

 人間は、食べなければ生きていけません。1日3食、1年間では1,095食、70歳まで生きたら70,000食。私たちの体は、日々私たちが口にするもので作られています。食事は、生きるために必要な栄養を摂取するために欠かせないものです。

 また、食事の場は人と人とのコミュニケーションの場でもあります。一緒に料理を作ったり、食卓を囲んだりしながら会話を楽しむことを通して人との関係性がはぐくまれることは少なくありません。

 食事は文化とも密接に関係しています。地域の郷土料理や季節の料理が継承されることも食事の重要な効果のひとつです。

貧困によって起こること

それでは、貧困は「食」にどのように影響するのでしょうか。 

週刊ダイヤモンドが行った調査によると、生活が経済的に苦しい状態に陥ったときに最も優先的に切り詰められるものが「食費」です*。

衣服は外からパッと見て違いがわかるため、無理してでも「周囲から浮かない」水準のものを入手する人が多いようですが、食べ物に関しては、隣の席の人が朝ご飯を抜いていようが、1日モヤシだけ食べて過ごしていようが、見た目からは判断がつきません。したがって、経済的に困窮した時に真っ先に“節約”の対象になってしまうのです。

これは対象を「子ども」に限っても同様です。貧困世帯の子どもに起こりうる食の問題として、以下の3点があげられます。

  1. 食事が満足に食べられず、栄養が不足する
  2. コンビニ弁当やファストフードばかり食べることで栄養が偏る
  3. 保護者が働いており、一緒に食事をとる機会が少ない

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

1.栄養が不足する

貧困の状態にある子どもは、「休日に朝食を食べない/食べないことがある」可能性がそうでない子どもに比べて約1.6倍も高いとの報告があります。

食事は子どもの学力や体力に影響を与えると言われており、「全国学力・学習状況調査」によると、毎日朝食を食べる子どもはそうでない子どもに比べて学力や体力の向上が見られやすいことが分かっています。

2.栄養が偏る

貧困の状態にある子どもはそうでない子どもに比べて、家庭で野菜を食べる頻度が低い可能性が高いことが指摘されています。

生鮮野菜・果実は米や乾麺などの主食に比べて単価が高く、かつ天候や作況変動のあおりを受けやすいため、経済的に困窮している場合には手に入れにくいものの代表格です。

生鮮野菜は入手してから調理する必要があるものが多く、ガスや電子レンジといった光熱費が発生します。また、調理の仕方を知らないため、購入しても食卓にのせることができないことを考えて購入にいたらない場合もあります。

3.食事がコミュニケーションの場とならない

日本では、貧困の状態にある世帯に対して「働いて世帯収入をあげよう」という働きかけを行っています。そのため、保護者が複数の仕事を掛け持ちしたり、長時間勤務をしたりして初めて子どもを養うのに十分な収入が得られる場合が多いのです*。

保護者が働いている時間が食事の時間にかぶっている場合、子どもは一人で食事をすることになります。このように一人で食事をすることは「孤食」と呼ばれます。

「孤食」の問題点として、以下の2点が考えられます。

  1. コミュニケーションの場としての食事の機能が失われてしまう
  2. 好き嫌いをしても注意されないため、栄養の偏りが生じる

食事を介したコミュニケーションは、子どもと保護者との間に信頼関係を構築するうえで大切です。また、幼稚園や学校など「社会」に出たときに他の人とどう関わっていけばよいのか、子どもが練習する機会でもあります*。

誰かと一緒に食事をすることが「楽しい」と感じる経験を持たずに育った子どもは、食事は栄養補給のための義務であり苦痛である、と考えるようになる恐れあります。

保護者が一緒に食事をとることが難しい状況にある子どもたちへの食の支援については、以下で紹介する「おうち食堂」などの取り組みがあります。

 

子どもの貧困への対応策 〜食〜

子どもの貧困を社会的に解決するため、以下のような食の支援が行われています。

学校給食

学校給食は明治22年に山形県鶴岡町で始まったものが最初と言われています。
当初は貧困児童のみを対象としていましたが、戦後、全国規模で学校給食が実施されるようになり、現在は全国の公立小中学校で学校給食が実施されています。

学校給食費は1食当たり300円前後に収まるようになっており*、管理栄養士による栄養バランスの管理が行われています。

地域の郷土食を給食に取り入れ、地域の食文化を残す取り組みも行われています。

学校給食の歴史について、詳しくは全国学校給食会連合会ホームページをご覧ください。

子ども食堂

2011年に発生した東日本大震災を受けて、2012年に全国初の子ども食堂が東京都大田区で誕生しました。
以来、年々数は増え続けており、2019年現在は全国に3617か所の子ども食堂が存在しています*。

新聞やテレビなどで取り上げられた当初、こども食堂は「貧困世帯の子どもが行く場所」というイメージが持たれていました。しかし、実際には、地域内での人と人との交流を促進することを目的として、「誰でも低価格/無料で食事できる交流の場」になっている場合が少なくありません。

仕事が忙しい保護者がほっと一息つける場所、子どもたちが一緒に遊んでくれる人を見つけられる場所、そんな地域の「憩いの場」として機能している子ども食堂が多くあります。

子ども食堂について、さらに詳しく知りたい方は子ども食堂ネットワークホームページをご覧ください。

おうち食堂

東京都江戸川区で子育て支援事業の一環として行われているのが「おうち食堂」という取り組みです。

食事支援ボランティアが直接家庭に出向き、食材の買い出しから調理までを行ってできたての手作り料理を提供します。

詳しくは、江戸川区ホームページをご覧ください。

フードバンク

フードバンクとは、「食品ロス(安全に食べられるのに捨てられてしまう食品)」と「食に困っている人」をつなぐ役割を果たします。

日本では、セカンドハーベスト・ジャパンが2000年に初めてフードバンク活動を開始しました。2019年現在、全国に76か所のフードバンクがあることが報告されています。

フードバンクは企業などから食品を集める役割を果たす一方で、実際に支援を必要としている人ひとりひとりに食品を提供する役割を果たしているのが「フードパントリー」です。
地域密着型のフードパントリー拠点が増えることで、食の支援を必要としているより多くの人に食べ物を提供することができます。

参照文献・リンク

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